氷河期世代サラリーマンが脱サラして漫画家になるまで その9

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スペリオールの「ルートNEO」コンペで連載権が取れなかった「東京昆虫ムスメ」と言う漫画。
本来ならお蔵入りになったはずなの企画なのだが、とある編集者の方にかなり推して頂き、例外的にシリーズ連載と言う形で連載が決まった。
この漫画は編集部でも意見が真っ二つに割れたらしく。そういう漫画はヒットし易いというジンクスと言うか前例があるとは聞く。
だが現実はこのブログを読み進めていただければわかりますのですけれどもぶつぶつ。

というわけで脱サラして約1年半でデビュー、その半年後に連載が始まる。
隔週のしかもシリーズ連載ということもあり収入はサラリーマン時代の半分くらいだが、しかしお金が入ってくるのは大変有難い。
このまま軌道に乗れば良いのだが。
さして大きなトラブルもなく、半年後無事単行本1巻が発売されることとなった。
中々にとんとん拍子である。

ちなみにルートNEOというのは単行本1巻分は連載し、その後重版されれば次描いて良いよという企画だ。
こうした方式はスペリオールに限らず、パイが週間漫画誌ほど広くない漫画誌ではよくある話である。
なのでこういった単行本一巻分コンペというのは、とりあえず1巻で話を終わらせて続きを期待させる体裁にするのが普通なのだが…

私は当然のごとく重版されるものとばかり思っていたので、1巻でとりあえずまとめるなどけち臭いことをしなかった。
そして当然のごとく重版されなかった。
重版されれば次があるという話だったので、重版されなければ事実上の打ち切りである。
まぁそういう事態を見越さずしれっと続きを描いた私がアレなのだが。

焼肉を食べながら担当さんと反省会。

「なんで昆虫ムスメは売れなかったんでしょうねぇ…」
hide「自分で言うのもなんですが、ゴキブリを愛でるヒロインと言うのがそもそも…」
「かわいいヒロイン×キモイ生き物で受けると思ったんですけどねぇ…」
hide「キモイと不快とは違うということですなぁ…」
「勉強になりましたなぁ…」

反省会終わり。

かくして2年間に及ぶ漫画修行は、もっと言えば19歳で受賞した時から漫画道が始まっていたとしたら、約20年に及ぶ私の漫画道は、たった半年で終わった。
あっけないものである。
脱サラしてまで作り上げたどりついた世界は、あっけなく終わってしまった。
だが世界が終わろうと、悲しいかな、人間は生きている限り歩き続けないといけないのだ。

打ち切りというのは、中々に切ない。
打ち切りは音楽に例えれば、武道館でコンサートを開いたもののお客さんがまばらで大赤字と言う状態…ではない
それでも集まってくれたお客さんの為にこそ、最後まで歌いきるのが歌手としての最低限の義務である。
だが最後まで歌いきることをせずに、集まってくれたお客さんを放っておいて楽器を畳んで歌手が帰ってしまう。これが打ち切りなのだ。
これが自作漫画を版元を通して出版するということだ。
読者をがっかりさせたくなければ、売れるしか無いのである。
出版社と組んで描いている漫画家は、皆そういうルールで戦っているのだ。
だが無論後日路上コンサートを開いて歌いきっても良いだろう。事実pixivなどで無報酬で打ち切り漫画の続きを描いている作家も居る。
そもそも無理して武道館でコンサートを開かずとも、近所のライブハウスで歌えば良いじゃないという考えも当然ある。

漫画で飯を食う道は主に二つある。出版社を通して原稿料を頂きつつ描くか、自費出版するかだ。
前者の場合のメリットは名前を広めるチャンスがあることと原稿料を頂けること、デメリットは単行本の収益が印税のみであること。
後者のメリットは自由に自分の裁量で描けることと単行本の利益率を上げられること、デメリットは原稿料が無いことと作品が独りよがりになることと名前が広まるハードルがかなり高いこと。
前者は版元を支える為に作品には最大公約数的な要素が求められるが、後者は自分ひとりだけ食えれば良いので最小公倍数な要素で良い。
前者は10万人から10円を頂くビジネスであり、後者は1万人から100円、あるいは1000人から1000円を頂くビジネスだ。
どちらが正解かというのは無く、向き不向きであろう。

君は再び出版社と組んで漫画を描いても良いし、描かなくても良い。
私が選んだのは…

[ 2018/06/21 12:48 ] 企画 エッセイ | TB(0) | CM(0)

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