氷河期世代サラリーマンが脱サラして漫画家になるまで その5

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アトラスと言うゲーム会社のAM事業部(ゲームセンターに置く機械を作る部署)に配属された私は、1年後海外に飛ばされる。

ゲーセンに置くウチの製品がトラブルだらけで、それを直すための調整が必要らしいので、技術スタッフとして私が派遣されたのだ。
経済学士の私が技術屋と言うのが既に何かおかしい。

色々店を回るが、その中の一つにどうも怪しげなスジの人々が経営している店があり、こんな故障だらけの売れない機械を売りつけやがってとものすごい勢いで怒られる。
会社は無論非合法組織と取引はしないが、製品は色々と転々流通する。最終的にどこに納入されるかまではわからない。
そしてゲーセンのゲーム機に限らず日銭を生む商売には、何かと怖い人も絡む場合がある。
彼は明らかにヤクザというかマフィアというか、ヤバそうな人で物凄く怒っている。
怒っているのだが…私は萎縮するどころではない。世にも恐ろしいものを現在進行形で目の当たりにしていたのだ。
なんと彼はシースルーのスーツを着ているのだ。
そしてその奥に見えるムキムキマッチョを見せ付けるように威嚇してくる。
冗談かなにかと思いきや何だか本気で怒ってはいる。

日本では刺青が威嚇の象徴になるように、どうもこの国ではシースルーの服を通して肉体美を見せ付ける事が威嚇の象徴になるらしい。
彼は物凄く怒っている。物凄く怒っているのだが、相手の乳毛が気になってそれどころではない。
これが文化の違いというヤツか。思えば遠くに来たもんだ。

その後製品が大量に保管されている建物に案内される。
それは辛気臭い大きなビルの地下にあった。
かび臭く薄暗くただっ広い部屋に、わが社の製品がうずたかく積まれている。
それは良いとして、部屋は壊れたイスや机が散乱しており、窓ガラスは当然のようにパリンパリンに割れていて、壁紙はボロボロにはがれてなんかドス黒いものがべったりと付いている。
何か凄い所に来ちまったなオイと思うが、乳毛の洗礼を受けた後なので気分は妙に落ち着いている。

色々とおっかないヒトが多いところだが監禁されているわけでも無いので、適当に機械を調整しつつ適度にサボりながら建物を散策する。
この建物、廊下が異常に少ない。部屋の向こうにまた部屋があったりして、それが延々と続いているのだ。
この辺もまた実に異国情緒溢れている。
暫くすると昼食が差し入れされる。なぜか昼食は山盛りのあずきバーだった。
これがこの国流のおもてなしなのか、あるいは嫌がらせなのかよくわからない。
岩のように固いあずきバーをかじりながらさてどうしたもんかなと暫く仕事を続けていたが、ある日突然待遇ががらりと代わる。
薄暗い地下から地上に引っ張り上げられ、肉に酒にお姉ちゃんにと毎晩夜通し接待漬けにされる。

あくまで後々の推測なのだが、どうもこの国の販売代理店がどうしても怒って聞かないので、私を常駐の技術者にするつもりだったようだ。
つまり人身御供というか。
散々酔っ払っている中、そういうわけだからこの国に留まるってサインしてくれと言われ、いい気分でサインをする。なんというエリア88
さすがは就職戦線で木っ端微塵に大敗した私なだけはある、安心と信頼の危険予測制度であった。
たださすがに直属の上司に何も言わないわけには行かないので報告する。

hide「(酔っ払いながら)というわけで私はこの国に留まりまーす」
上司「経済学部卒のお前に何が出来るんだ。遊んでないでとっとと戻って来い」

そりゃそうだ。
まぁそんなわけで会社というのはつまり雑務の投げ合いであり、ボヤボヤしてたらどんどん変な仕事が来る。
会社は学校じゃないのである。

この国を発つ前に、この国の販売会社の人が「うちは最近ゲーム機を開発してるんですよー」といってとあるゲームセンターに案内してくれた。
そこはいかにもな所だった。
コナミ製ドラムマニア…をデッドコピーしたようなよくわからない音ゲーが置いてあり、何故か筐体からコントローラーじゃなくてマウスが出ておりゲームを選択する。
まぁ、そういうゲーセンだ。
そしてそのゲーセンの片隅に、この国の販売会社が作ったというゲーム機はあった。
日本の60年代に売っていたようなブリキのおもちゃのデザインをした機械が、ぎこちない動きで旗揚げをしてそれを当てるゲームだ。
このようなゲームは日本では10年、いや15年以上前に廃れている。相手はアハアハと能天気に笑っている。私は苦笑いする他無い。
この国が日本に追いつくには後30年はかかるなと内心クスクス思ったものだ。

10年後、この国のゲームは世界を席巻し、アトラスは潰れる。
変わらないものなど無いのである。
[ 2018/06/14 05:48 ] 企画 エッセイ | TB(0) | CM(0)

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