蟲毒

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今日は取材で海へ。
ここ2か月ほとんど外に出ている気がする。
漫画家はインドアな商売…のはずなのだが、連載立ち上げ時はとにかく外に出た方が良いと思う。
なぜなら連載…特に週刊連載をやって一番きつかったのは、絵…もそうだが、ネタの枯渇だからだ。
とにかく用意しておいた引き出しがあっという間にカラがなる。あるいは無駄になる。
なので次の連載は出来るだけ可能な限り引き出しをふやさねば、なのである。

漫画の連載…特に週刊連載の場合、それは一言で言って蟲毒だと思う。
色々な毒虫を一つに壺に入れてしばらく置くと、最後に残った虫はあらゆる毒を凌駕したハイパーな虫になる。
この虫を使って呪術やらなにやらをつかうと効果てきめん…という、古代中国に伝わる民間伝承だ。

週刊連載の場合、毎週の締め切りと競争という過酷な世界に複数の作家が放り込まれる。
が、べつにその日のために徹底的に教育された選りすぐりの精鋭のみ放り込まれるわけではない。
私のように脱サラして間もない素人に毛が生えたような人も中にはいる。
なので当然大抵の作家は即死する。

これは一見とても非効率だ。
もっとこう、達人レベルのベテランのみで固めた方が良いんじゃないか?という考えも確かにある。
しかし、漫画の世界…というかジャンプ系だけかもしれないが、そこにはこういう言葉がある。
ヒットはベテランが作り、大ヒットは新人が作る
というものだ。

週刊連載という鉄火場のような世界で揉まれると、まれに極々一部の新人作家が確変を起こす。
画力か構成力かキャラ、あるいはその全てが異常なレベルで上達したりする。
そうした作品が時代に適合すると、それはもう大変なことになる。
その作家一人だけでビルがいくつか建ってしまうほどに。
だからこそ、出版社は赤字を垂れ流してでも新人を最前線に逐次投入するのだ。

さて、問題は最前線に来たとたんいきなりヘッドスナイプされて即野戦病院に運び込まれた場合である。
そうなったらその作家はどうなるかというと…
べつにどうともならない。
次頑張ればいいだけである。

漫画業界でよく言われるテコ入れというものも、蟲毒における確変や突然変異を期待している部分があると思う。
それに対してどう対応するか、そもそもテコ入れという手段に陥らないためにどうしなければならないのか。
それをよく考えて次の作品に挑みたい。

まだまだ取材

年末年始に2週間ほど取材で日本中を飛び回り、一旦東京に戻りネームを70ページ近く一気に描き上げて、そしてまた再び取材の旅に出ている。

取材というのは漫画の企画が通れば編集部から取材費を出して頂けるのだが、それまでは基本的に自分の力で何とかしないといけない。
いやまぁしなくてもいいのだが、私の場合取材しないととてつもなく軽い話になってしまうので…

で、色々な方々にご尽力いただき、病院の院長さんや大学教授の方々にお会いしたりすることになった。
さすがにいつものよれよれの格好だとアレなので、スーツである。
スーツ!
私はリーマン時代もスーツをめったに着ない職業だったので色々と換算すると…スーツを着るのは実に10年ぶりである。
ネクタイの締め方をすっかり忘れている。
というかカッターシャツが年季が入りすぎて黄ばんでいる。
結局どう洗っても黄ばみが落ちないので、カッターシャツは新品の奴を現地で買うことにした。

出先で服を買うとは、私も偉くなったものである。
漫画家になろうと決心して脱サラして約2年は当然のごとく漫画で稼げるわけもなく無収入。
賞でも取って幾ばくかの賞金があればよかったのだが、努力賞すら受賞していない(落ちた)。
しかも働いたら負け、稼ぐなら漫画で、という目標を立てていたのでバイトすらしていなかった。
かといって脱サラして実家の親を頼るというのは流石にアレなので、東京で貯金が滝のように流れるのを眺める日々。
2000円の毛布を買うのに8時間くらい悩んだ挙句結局買わず(買えず)、脱サラして最初の1年は毛布なしで過ごしていたものだ。

ただまぁこういう貧乏話はデビューする前、あるいは売れてからは笑い話、あるいは美談になるのだが、それ以前の、デビューはしたけどさして売れていない私のような作家の場合、一番どうでもいい情報である。

まずはとにかく売れたいところだ。
売れてマスコミに取材された時のための想定問答はもう1万回くらい脳内シミュレーションしているのだが。

取材取材ひたすら取材

漫画の連載が終わって何をしているかというと、のんびり落書き期間もとうに終わり、今はただひたすら次の作品のための取材をしている。
東京で何人かと話し本を読み漁ったのち、今は地元で活躍されている医師や議員さんや役所の方々とお話しさせていただいている。

で、はたと困った。
名刺が無い。
漫画家の名刺は作品と単行本だよっとくらぁとか思っていたが、さすがにここまで異業種の方と話しまくっているとちょっとまずい。
相手は丁寧に名刺を差し出して頂いているのに対し、こちらは突っ立ってへらへら笑っているだけである。
あかんだろそれ。
今は2000円もあれば簡単なものができるようなので、とっとと作らねばならない。
気心の知れた人には名刺代わりに「夜明け後の静」の単行本で良いが、カタギの方に静さまはちょっとアレである。

次の話はいくつか考え、どれもだいぶ固まってきているが、取材は重ねれば重ねるほど深みが出る。
知って吐く嘘と知らないで吐く嘘は天地の差があるので、ギリギリまで粘りたい。

連載後は稼いだ印税でのんびり温泉旅行というのが理想ではあるが、そういうのは頂点にいる作家にのみ許された特権であり、大抵の作家は次の連載を取るための企画を速攻で立てなければならない。
マグロは猛スピードで遊泳してエラフィルターに大量の海水を通過させて酸素を濾し取らないと、窒息して死んでしまう。
漫画家もバタバタ動いてとにかく連載しないと死んでしまうのだ。漫画家はマグロなのだ。
ではどうすれば良いのかなのだが、絵も話も微妙な私のような作家の場合、足を使うしかない。
足を使い続けていれば色々な人から更にいろいろな人に繋がり、その分ネタも増えてくる。

漫画家は家に引きこもる商売だが、今はリーマン時代より遥かに広い意味での外に出ている。
変われば変わるもんである。

サイン色紙作成中

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私の人生において最も嬉しかったことは、昔少年ジャンプで連載していた「スラムダンク」が終了した時、怖れ多くも井上雄彦先生からお葉書をいただいたことだ。
おそらく応援してくれたファンの方全てに描かれていたのだと思う。

読者の方からの応援やファンレターは、おそらく読者の方が考えている以上に嬉しいものだ。
これは私も連載するまではピンと来なかったが、連載すると本当によくわかる。
連載と言うものは、本当にメンタルが削られる。
自分がやっている全てのことに、全く自信が持てなくなる。
そんな時に読者の方からのお手紙を読むことは、本当に励みになるし支えになるのだ。
おかげ様で「夜明け後の静」連載中は実に多くの方々にお手紙をいただいた。
なのでお返しせねばとずっと思っていた。

読者の方に対し最高のものをお返しするとすれば、それは連載を続けることだ。
けれどこれがなかなかどうして、グ、グムー…

というわけなので、せめてもの恩返しと言うことでファンレターを送って頂いた読者の方々へサイン色紙を描いている。
漫画業界の頂点に居る井上先生が行われていたことを、最底辺でうろちょろしている私がしない道理はないのだ。

が、いま次の連載の立ち上げで色々な方面に動きまくっていてちょっとあれでこれしてて予定より遅れてしまっています…!
1月中には送れると思いますので、ご期待下さい!

絵柄修正計画

自分の漫画の単行本を開くといつもうわっとする。
セリフが多いうえに漫画の線も多いので、ぱっと見ただけで疲れてしまうのだ。

ちょっと前までは「漫画は導入部が長いと読者が飽きるので、7ページまでには導入を終わらせるべし」みたいな定石のようなものがあったような気がするが、最近は1ページ目が勝負だ。
コンテンツがありすぎて毎日が忙しい今の読者に対し、7ページまで読めば面白くなるからそこまで読んで!というのはパワハラに等しく、2ページ目をめくってもらうことはもう至難の業だ。
なので線が多くてうわっするような絵は忌避される、と思う。(原哲夫先生や森田まさのり先生のように線を上手く纏められる方は別だが)

しかし中にはセリフだらけでぱっと見読みにくそうなのに実際それほどでもない漫画もある。
それは線があっさりしており、画面からの圧が全体的に低くて目に優しいからだ。

というわけで1ページ目から目を引くようなキャッチーで、なおかつうわっと思われないような目に優しい絵を描く必要がある。
さて、では私は連載中、どういう絵を描いていたかと言うと…

黒多く

うわっ
私の線、多すぎ…?
なのだが、連載中はとにかく上手く行っているうちは良いけれど上手く行かなくなると自信というものがカツオブシのように削られていく。
自分の描く話やらキャラやら絵やらが全てダメに見えてくる。
なので絵についてはついつい線を足してしまう。
線を足すと何となく上手っぽく見えるからだ。
昔とある新人漫画賞の授賞式の席でちばてつや先生が
「あー、そういうことってよくあるけど、それだけはしちゃいけませんよ
と仰っていたが、その言葉を思い出したのは連載が終わった後からであった。
しかも線を足すということは作画時間が単純に増えるというわけで、例えば上の場合、射線や墨入れに1時間くらいかかっている。
隔週連載はともかく週刊連載で1時間と言うのは命取りになる。

そこでそもそもこういった線の多い絵に需要があるのか?と思い、線の量を4パターンほど変えたものを並べてツイッターでアンケートを取ってみた。
50票くらい集まれば御の字と思っていたら174票もの回答をいただいた。ご回答いただいた方、大変ありがとうございました…!

で、アンケート結果。

黒多く
斜線多め+墨 … 9%(4位)
これは私が見せゴマなどでよく描いていた絵柄である。
だめじゃん…


いつも通り
斜線普通 … 19%(3位)
連載時に一番多かった描き方がこれなのだが、それが3位。
つまりあんまり線を増やすとかえって読者が疲れると言うことがここで立証された。
読者は疲れるわ描いている方も疲れるわ時間がかかって原稿を待つ担当さんも疲れるわ、良いとこなしである。
ウィンウィンではなくローズローズ。なんてことだ…


斜線無し・影トーンあり
斜線なし+影トーン … 30%(2位)
下手に線を増やすくらいなら何もない方がウケが良いようだ。
しかも作画時間は線が多いバージョンの3分の2くらいに縮まる。
ただ少女漫画のようなあっさりした絵ならばこちらで良いのかもしれないが、私の描く絵はちょっと濃いので全体的に手抜き感があるような気もする。


影トーンなし
斜線少なめ+影トーンなし … 43%(1位)
この描き方が一番評判が良かった。
描く方もかなり楽である。
影トーンはあったほうがいいかもしれないが。
というわけでこれからは上の描き方で煮詰めたいと思う。
これで作画時間もずいぶん短縮することになるだろう。
なるといいのだが…

プロフィール

hide

Author:hide
なるようになるさ。

脱サラして漫画を描いています。
お仕事のご依頼・お問い合わせ先
mail:ppnidukurihimo@gmail.com
twitter:https://twitter.com/hidegogogogogo

■経歴
1999 大学卒業後サラリーマンになる
2012 脱サラしてぶらぶらする
2013 漫画家を目指す
2014 ビッグコミックスペリオール「東京昆虫ムスメ」掲載
2015 同誌同作品で連載
2016 同誌「外務官僚みうみう」「サザンクロス高木」掲載
2017 同誌「御伽坊主」掲載
2018 ヤングジャンプ「夜明け後の静」連載
2019 となりのヤングジャンプ「静さまは初恋である、浪漫斯はまだない。」連載

■執筆枚数(ネーム/原稿)
受賞まで:33/33(1作目)
デビューまで:419/174(6作目)
連載まで:838/272

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